こんな疑問に答えます。
本記事の内容
こんにちは、元東京消防庁消防官のイシカワです。
今回は、消防官採用試験の教養試験対策を解説します。本記事を読むことで、「対策の流れ・優先すべき科目・オススメの参考書」などが分かります。
それでは、さっそく見ていきましょう。
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そもそも教養試験って何?
「教養試験」とは、公務員試験における学力テストのこと。
消防官採用試験の場合、高校までに勉強した内容が択一マークシート方式で出題されます。大きく分けて「一般知識」と「一般知能」の2分野に分かれており、一般知識分野では公務員として必要な教養、一般知能分野では実務に必要な事務処理能力が評価されます。
一般知能 | 数的処理 | 判断推理・数的推理・資料解釈 |
文章理解 | 現代文・英文 | |
一般知識 | 社会科学 | 法律・政治・経済・社会 |
自然科学 | 数学・物理・化学・生物・地学 | |
人文科学 | 世界史・日本史・地理・思想・文芸 | |
その他 | 時事問題 etc. |
内容は上記のとおり。なかなかボリューミーです。
各科目の特徴
数的処理
最も配点が高い科目で、数的推理・判断推理・空間把握・資料解釈の4分野から出題されます。
数学というより、算数やIQテストに近いイメージです。出題パターンがある程度決まっているので、何度も演習を繰り返しつつ、解法に慣れていくのが重要となります。
理数系の受験生は初見で解けてしまうかも知れませんが、一般的には得点源にするのに一番時間が掛かる科目だとされています。
難易度「高」& 重要度「最高」の科目なので、苦手意識がある人は今すぐ対策を開始しましょう。
文章理解
大学入試レベルの現代文・英文・古文などが出題されます。
英文・古文は対策に膨大な時間がかかる一方、出題数はそこまで多くないので、正直なところ捨ててしまってもOKです。
一方、要注意なのが現代文。コツさえ分かれば誰でも解ける問題が多いで、受験生全体の正答率も高めです。したがって、失点すると他の受験生と大きな差がついてしまうため、必ず得点できるよう準備しておきましょう。
社会科学
社会・法律・政治経済などの分野から出題されます。
出題範囲は広めですが、テレビや新聞で見覚えのある言葉がたくさん出てくるので、勉強してみると案外飲み込みが早い科目だったりします。実際、私自身も政治や法律には疎く、初めて過去問を解いた時には全く得点できませんでしたが、一通り参考書を眺めてみたところ試験本番ではほぼ全問正解できました。
少しでも参考書に目を通しておけばそれなりに得点できる科目なので、実はかなりお得な科目だったりします。
自然科学
数学・物理・化学・生物・地学などから出題されます。
一般的に配点が低めとされる科目ですが、東京消防庁だけは数的処理並みに出題数が多いので注意が必要です。なお、数学・物理・化学については、中学高校レベルの公式を使った計算問題も出題されます。
計算科目が苦手な方は、暗記系科目の生物・地学から勉強し始めるのがオススメです。
時事問題
社会科学系の問題と絡める形で、毎年3〜4問程度の出題があります。
時事問題の知識は論作文試験や面接試験でも大いに役立つので、優先度は高めです。
人文科学
世界史・日本史・地理・思想・文芸などの分野から出題されます。
出題範囲が広い一方、配点は低めなので、勉強しても旨味が少ない科目と言われがちです。ただ完全暗記科目なので、記憶力に自信がある人は短期間でも得点源にすることが可能です。
自然科学の生物・地学なども同じ暗記科目ですが、どうしても理系科目に苦手意識がある受験生は人文科学から攻めてみましょう。
教養試験は受験生の学習能力をテストするもの
公務員試験において教養試験が実施されるのは、「必要に応じて知識や技術を吸収できるか」を評価したいからです。
これは公務員の職務環境が非常に複雑で、部署や役職が変わるたびに新しい知識・技術を習得しなければならないことが関係しています。
たとえば消防官の仕事であれば、予防課なら消防法や建築基準法等の法令知識、経理課なら会計や財務の知識、危険物課なら化学や物理の知識など、部署ごとに必要とされる知識・技術が大きく変わります。
消防官の仕事というと、ポンプ車に乗って火を消したり、救急車でケガ人を搬送するといった業務が真っ先に思い浮かぶかも知れませんが、実は所属する部署ごとに様々な専門性が求められるわけです。
もし仮に人事異動で部署が変わった場合、昨日までポンプ車に乗って災害現場で活動していた職員が、明日からは法律専門のデスクワークになるといった事もあるわけです。
そんな時、「この仕事は苦手だからやりたくない」という話は通用しませんよね。
仕事である以上、与えられた職務に応じて、必要な知識や技能を習得しなければなりません。
公務員試験における教養試験は、このような公務員の特性を鑑みて、受験者の学習能力を評価するためにあるというわけです。
補足
専門的な知識や技術が必要なのは、デスクワークに限らず、災害対応のスペシャリストとして働きたい場合でも同じです。たとえば東京消防庁の場合、現場でのキャリアアップを模索するのであれば、救助資格・救急資格・ポンプ機関技術(ポンプ車を運転するために必要な資格)など、災害対応に特化した専門資格を取得する必要があります。勉強は、消防官になった後もずっと続くというわけです。
どの科目を優先的に勉強すべきか
教養試験では、いずれの科目も1問1点の配点なので、正答した絶対数がそのまま得点となります。
つまり、出題数の多い科目を重点的に勉強すれば、効率的に得点源を増やすことができます。
ここで、最新の科目別出題数を見てみましょう。
分野・科目 | 東消1類 | 政令市消防 | 市役所消防 | ||
一般知能 | 文章理解 | 8 | 8 | 6 | |
数的処理 | 判断推理 | 6 | 8 | 7 | |
数的推理 | 4 | 8 | 5 | ||
資料解釈 | 5 | 1 | 2 | ||
一般知識 | 社会科学 | 法律 | 2 | 4 | 2 |
政治 | 1 | 1 | 0 | ||
経済 | 1 | 2 | 2 | ||
社会 | 3 | 5 | 5 | ||
人文科学 | 日本史 | 1 | 2 | 2 | |
世界史 | 1 | 2 | 2 | ||
地理 | 1 | 2 | 1 | ||
国語 | 2 | 0 | 0 | ||
文学 | 0 | 0 | 0 | ||
芸術 | 0 | 0 | 0 | ||
思想 | 0 | 0 | 0 | ||
自然科学 | 数学 | 4 | 1 | 0 | |
物理 | 2 | 1 | 1 | ||
化学 | 2 | 2 | 2 | ||
生物 | 2 | 2 | 2 | ||
地学 | 0 | 1 | 1 | ||
合計 | 45 | 50 | 40 |
このとおり、数的処理の配点が約3割と、圧倒的に高いことが分かります。
教養試験の出題傾向は毎年変動するものですが、この数的処理重視の傾向だけは例年ほぼ変わりません。
したがって、まずは数的処理をガッツリ対策して大量得点を狙いつつ、他の科目は補助的に勉強して、少しずつ得点源を増やしていく戦略が有効となります。
なお、少し注意が必要なのが東京消防庁の自然科学です。
数的処理に次いで配点が高い科目は、大抵の消防本部であれば社会科学ですが、東京消防庁の場合は自然科学です。
近年、理系人材を積極採用している東京消防庁ですが、教養試験においてもその傾向が表れているというわけです。
年度によっては数的処理と同程度の問題数が出題される場合もあるので、東京消防庁を受験される方は自然科学も重点的に対策しておきましょう。
よくある質問:何点くらい得点できればいいですか?
結論、「6割くらい」です。
たとえば東京消防庁の教養試験であれば、45点満点なので25〜30点程度を得点することが目標となります。
もちろん、これより高得点が狙えるならば理想的ですが、正直、6割得点できれば十分です。
実際、私自身も含めて、知り合いの東消職員は大抵が6割ないしそれ以下の点数でも合格しています。
何事もバランスが大事。
個人的な意見ですが、公務員の教養試験で満点を目指すのは非常にコスパが悪いと思います。
教養試験で6割を目指すのはわりと簡単ですが、それ以上の高得点となると難易度が格段に上がるからです。
真面目な受験生ほど、完璧を目指して頑張り過ぎてしまいがちですが、何事もバランスが大事です。
教養試験だけに固執せず、論作文などの他の試験対策にもまんべんなく取り組むようにしましょう。
補足
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おすすめ参考書5選
ここでは、イシカワが太鼓判を押せる教養試験対策の参考書5選を紹介します。
テキスト選びの参考になさってください。
大卒・高卒消防官 教養試験 過去問350
消防官志望者のバイブル的過去問集です。
東京消防庁だけでなく全国各地の消防本部に対応しているので、複数の本部を併願受験する受験生には必須級アイテムです。
東京消防庁 過去問+予想問題集
東京消防庁の直近5ヵ年分の過去問と、最新の出題傾向に対応する本試験予想問題1回分を収録しています。
大手予備校のTACが監修しているテキストということもあって、なかなかの人気テキストです。東京消防庁を受験予定の方は早めに入手しておいた方が無難かも知れません。
なお注意として、この過去問集は1類(大卒区分)専用のテキストです。2〜3類受験者は必然的に過去問350の一択になると思います。
スーパー過去問ゼミ
通称「スー過去」と呼ばれる無敵の公務員試験対策テキストでして、私も実際に使ってました。
「下手な予想問題を解くよりも、過去問を使って勉強した方が早くない?」という思想の問題集でして、控えめにいって最強です。
主要7科目全てのテキストが揃っているので、早い話、これを全冊コンプリートすれば教養試験対策は終了です。
警察官・消防官 ストロングテキスト
スー過去は最強のテキストではあるのですが、なにぶん少しスパルタなところがあります。
なので、スー過去を少しやってみて「ちょっと難しいな」と感じた方は、この「ストロングテキスト」がオススメです。
数的処理・判断推理・空間把握に特化した参考書で、理系科目に苦手意識がある方向けに作られてます。
問題を解く手順を1 から10までやさしく解説するスタイルに定評がありまして、テキストだけでなく動画解説をインターネットで視聴できるのも特長です。
ただ少し注意として、掲載している問題数が若干少ないのと、難易度が低い問題が多いので、これだけやって試験本番に挑むのは厳しいかなというのが正直な感想です。
STEP❶ ストロングテキストで基礎学習
STEP❷ スー過去で実戦対策
上記のような組み合わせで使うのが無難かなと思います。
速攻の時事
公務員試験に特化した時事対策本です。教養試験対策・小論文試験対策・面接試験対策と、1冊で3回役立つテキストでして、コスパ最強の1冊です。また民間企業の採用試験対策にも十分使えるので、民間企業と公務員を併願受験する方にもオススメです。
【おまけ】イシカワの勉強法
ここでは、私自身が消防官採用試験で実践していた勉強のコツを2つ紹介します。
必ずしも全ての受験生と相性の良いテクニックとは限りませんが、参考にしてみてください。
参考書は3周繰り返す
学習強度を変えつつ、1冊の参考書を3周します。
具体的なイメージは次のとおり。
- 1周目
全てのページをザックリ読み流します。深掘りせず、「こんなもんか」と気楽に受け止めながらドンドン最後まで読み進めます。分からない問題があってもガン無視でOK。1冊あたり、1〜3日くらいで読み終えるイメージです。
- 2周目
ざっくり問題を解いていきます。理解できなかった部分にはマーカーや付箋などで印をつけて、気にせず最後まで終わらせてしまいます。
- 3周目
印の付いている部分だけ、丁寧に解き直します。最終的に分からない問題が残ってしまっても「仕方がない」と割り切ります。
ざっくりですが、こんな感じです。
この方法において一番大切なのは、「理解できなくても落ち込まない・気にせず進む」ということです。
この方法には、次のような特長があります。
- 繰り返し知識を刷り込むので、記憶の定着率が高い。
- 苦手な部分だけ重点的に学習できる。
- 少しずつ丁寧に勉強するスタイルと比べて、学習速度が圧倒的に早い。
なお、4周目以降を繰り返すかはお好みです。科目ごとの重要度や、試験日までの残り時間と相談しながら決めてください。
ちょっと補足
上記の勉強法は、弁護士・山口真由氏が提唱する「7回読み勉強法」のテクニックを、私が自分の勉強スタイルに合わせて個人的にアレンジしたものです。オリジナルの勉強法では7回の流し読みを推奨してますが、私の場合は今回紹介したスタイルが一番しっくり来た感じです。書籍についても、勉強時間を圧倒的に短縮するノウハウが満載なので、興味のある方はぜひ一度手に取ってみてください。
得意分野より苦手分野に集中する
当たり前ですが、勉強せずに解ける問題はやらなくてOKです。
たとえば私の場合、もともと理系出身なので、数的処理や自然科学には苦手意識がありませんでした。
逆に、社会科学・人文科学・時事問題などはド素人でしたので、参考書も一通り買いそろえて、重点的に勉強しました。
こんな感じで、教養試験対策では「苦手科目に集中する」という戦略が非常に重要となります。
得意分野を復習して手堅い得点源にするのも大切ですが、基本的には苦手分野と戦って、新しい得点源を作ることに集中するのが賢明です。
まとめ
ということで、今回は以上です。
消防官採用試験の教養試験対策は、一見すると試験範囲が広大で、何から手を付けていいのか分からなくなりがちですが、今回紹介したテクニックを意識すれば、限られた時間を有効活用しつつ対策を進められると思います。
最後に、一番重要なポイントをまとめておきます。
教養試験対策のポイント
- 教養試験は高校レベルの学力テストで、6割くらい得点できればOK。
- 数的処理は配点が高いので、最優先で勉強する。
以上です。本質は意外とシンプルなので、勉強しつつ意識してみてください。
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