このような疑問に答えます。
面接対策の流れ
読者さんへの前置きメッセージ
こんにちは、元東京消防庁消防官のイシカワです。
本記事では、消防官採用試験の面接対策について網羅的にまとめています。
「これから面接対策を始めるけど、何から手を付けていいのか分からないや」という方に対し、今日から何を始めればいいのか、具体的なイメージを持ってもらうのが本記事の目的となります。
なお私は現在、民間企業にて働いていますが、ここ数年間は採用担当を務めています。実際の採用現場で培った経験と、公務員として働いてきた実務経験に基づいてまとめた内容ですので、情報としての質は高いと思います。
それでは、さっそく対策を進めていきましょう。
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『 消防面接・模範回答40選 』
STEP ❶ 自己分析 … 面接官に自己紹介するための下準備
まず下準備として、自己分析からはじめます。自己分析の目的は以下の3つです。
- 就職活動の軸を明確化する
- 自分の強みと弱点を把握する
- 上記2つのテーマについて、他人に分かりやすく説明できるよう整理する ( 志望動機と自己PRを作る )
要するに、「面接官に自己紹介するための準備をしよう」ということです。
なお、自己分析の手順はYOUTUBEでも詳しく解説しています。
※ 自己分析の解説部分から再生が始まります ( 読み込みに時間がかかる場合があります )
就職活動の軸を明確化する
まず、あなたが職業選択する上で一番重視するポイントをはっきりさせましょう。
「やりがい」「給与」「地域的なこだわり」など、なんでもいいです。優先順位がハッキリしているならば、ひとつに絞らなくてもOKです。
とにかく自分にとって「これだけは譲れない!」というポイントを見つけましょう。
就職活動の軸を見つける方法
「なぜ消防官になりたいのか」を自問自答し、深掘りしましょう。
たとえば、以下のようなイメージです。
こんな感じです。
自問自答を繰り返すことで、就職活動の軸が明確になります。今回の場合、「人助け」というキーワードが就職活動の軸だと分かりました。
こんな当たり前なことでいいの?
こう思った方、心配ご無用です。
私自身を含め、こういう単純な志望動機でも合格している先輩たちは大勢います。
理由は後ほど説明しますので、とりあえず先に進みましょう。
プラスアルファで志望動機が完成
就職活動の軸となるキーワードに、「なろうと思ったきっかけ」や「地域的なこだわり」をプラスすると、簡単に志望動機が完成します。
たとえば、「人助け」に興味を持ったきっかけが「消防官が災害対応しているTVニュースを観たこと」で、かつ「生まれ育った地元で働きたい」という地域的なこだわりがある受験生の場合、次のような志望動機を作れます。
ざっくりですが、こんな感じです。
無理に背伸びしない
就職活動の志望動機というと、他の受験者と差別化するために、何か特別なエピソードを盛り込まなければと考える方がいます。
たしかに、強い独創性が求められるクリエイティブな職に就きたいのなら、それも必要なのかも知れません。
しかし、あなたがなりたいのは消防官。必要なのは奇抜な志望動機ではなく、仕事に対する実直な熱意とやる気です。
ちょっと考えてみてください。
そもそも消防官を志すのに、何か特別な理由が必要でしょうか?
情熱的で感動的なエピソードがなければ、消防官を目指してはいけないのでしょうか。
そんなこと、ありませんよね。
ぶっちゃけ志望動機なんて、なんでもOKなんです。
たとえば、「小学生の頃の職場体験ではしご車に乗せてもらって、当時からずっと消防官になりたかった」とか「大学のキャリア相談でスポーツ経験者であることを伝えたら消防官を勧められた」という話でもいいでしょう。
自分の志望動機がどんなに素朴でも恥じる必要などありません。大切なのは、あなたが消防官になるためにどんな行動をしたかです。
こんな説明があれば、大抵の面接官は納得してくれます。
しっかりと自分の言葉で、等身大の志望動機を伝えましょう。
自分の強みと弱点を把握する
志望動機がある程度まとまったら、次は自分の強みと弱点を把握していきます。
たとえば、以下のようなイメージです。
こんな感じです。
「野球が得意」という、一見よくあるキーワードでも、丁寧に深掘りすると色々なアピールポイントを発見できます。
「野球が得意」から引き出せる強み
- 継続力がある。
- 体力に自信がある。
- 建設的なチームワークを作れる。
同様に、弱点を分析する場合は以下のとおりです。
こんな感じです。
大切なのは強みを活かし、弱点を克服する姿勢
当たり前ですが、世の中に完璧な人間など存在せず、誰にでも得手不得手があります。それは、採用側だって分かっています。
重要なのは、自分を客観視した上で、得意分野を伸ばす努力をしているかどうか。また、弱点を克服するために改善方法を模索しているかどうかです。
下手に強みを誇張したり、弱点を隠したりするのは絶対にやめましょう。
また、これは少し余談ですが、人の短所は「長所の裏返し」ということがよくあります。
たとえば、「心配性な性格」は「慎重でミスが少ない」、「お節介な性格」は「コミュニケーション能力が高い」、「大雑把な性格」は「ストレスや逆境に強い」などです。
一見短所に思える特徴でも、実は良い面が隠されていたりします。
面接官に「長所と短所を教えてください」と質問された場合は、なるべくこの「短所は長所の裏返し」というポイントを意識すると良いでしょう。
少し手を加えれば自己PRが完成
自己分析で明確になった自分の「強み」は、そのまま自己PRとして使えます。
たとえば、部活動で頑張ったエピソードを自己PRに使いたい場合は、以下のような構成が考えられます。
例
「私の強みは継続力です。どんな状況でも向上心を持って「学び」を継続することができます。たとえば、高校時代の部活動でレギュラーを勝ち取る時に、この強みが活かされました。私が所属する◯◯高校の野球部は、県内有数の強豪校ということもあり、同級生はスポーツ推薦の学生が大勢いました。一般入試で進学してきた私の実力は、入部当初は部内でも下から数える方が早いほどでしたが、私はどうしても卒業までにレギュラーを勝ち取りたいと考えて、自分の弱点を克服するための計画を立てました。具体的には、◯◯といった努力を継続しました。結果として、2年生の夏にはレギュラーの座を勝ち取りました。消防官の仕事は専門性が高く、一人前になるまで時間を要する職業ですが、持ち前の継続力を武器に、どんな職務にも挑戦し続けたいと考えています。」
こんな感じです。ちなみに私は高校野球のこと全然わからないので、これはあくまで参考ということで。
自己PRのポイントは以下の通りです。
- 結論から述べる。
「私の強みは◯◯です」
- 具体例を示す。
「例えば◯◯という経験で、その強みが活かされました」
- これからどう活かすか述べる。
「この強みを◯◯の形で活かしたいです」
なお、自己PRで重要なのは「 物事の過程 」であり、結果ではありません。
仮に特別な実績がなかったとしても、自分なりに真剣に何かに取り組み、その過程で学びや教訓を得たのであれば、それは立派なあなたの強みですので、胸を張ってアピールしましょう。
実績アピールはほどほどに
消防官採用試験でよくある自己PRとして、部活動での大会成績をアピールする人がいます。基本的には問題ないのですが、発言の内容が「結果のアピールだけ」になるのはNGです。正直、大会成績などは面接カードを読んだ時点で面接官はすでに把握済みですし、同じ内容を繰り返しアピールされても新しい発見は何も無いからです。
せっかく貴重な面接時間なのですから、面接カードに書いてある実績を念押しするのではなく、その経験にまつわる「強みを示せるエピソード」をアピールしましょう。
特に、受験者が野球やサッカー等の団体競技経験者だった場合、面接官は尚のこと「チームとしての実績」ではなく「チーム内でのあなたの活躍」を知りたいはずです。自己PRを作る際は、このような面接官の着眼点をしっかり意識しましょう。
役職は重要ではない
前職でのリーダー経験や部活動での主将経験などは、リーダーシップや主体性など、社会人として有望な能力を示しやすい経歴です。できればその経歴を思う存分アピールしたいところですが、基本的に「役職経験 = 優秀」という評価にはならないという点に注意しましょう。
役職経験はあなたの人間性を示す布石になるだけで、重要なのはその中身だからです。
どんな目的意識を持って、どのようにリーダーシップを発揮したのか。また、周囲の仲間や同僚をどのように巻き込んで仕事をしてきたのか。そこが明確になる自己PRを模索しましょう。
他己分析してみる
近くに頼れる友人や家族がいるのであれば、ぜひ他己分析をやってみましょう。
やり方は簡単で、なるべく容赦なく本音を話してくれる相手に「私のこと、他人にどう紹介する?」と質問すればOKです。
場合によっては耳が痛いような短所を指摘されるかも知れませんが、それが周囲から見たあなたの姿ですので、言われた事を素直に受け止めましょう。
短所は克服するか、無理なら改善策を考えて面接官に説明できるようにしておけばOKです。逆に自分の知らない長所があると分かったら、どうやってアピールできるか考えておきましょう。
STEP ❷ 業界研究 … 自分の強みを消防と結びつける
自己分析が終わったら、次は業界研究を進めていきます。「消防とは何か」を研究しつつ、どうすれば自分の強みを消防組織で活かせるか考えていきましょう。
具体的な手順は以下の4ステップです。
業界研究の手順
- 事前学習
「日本の消防」の全体像を把握します。消防白書を読めばOK。
- 組織研究
消防本部ごとの特徴を把握します。消防本部のWEBサイト・採用パンフレットを読めばOK。
- 自分の強みと消防組織を結びつける
- 現実的なキャリアプランを考える
ちなみに、「なぜ最後にキャリアプランが必要なの?」と疑問に思う方もいるかも知れませんが、仮にあなたが採用側の立場だったとして、考えてみてください。
消防組織についてしっかり理解し、自分の強みも知っていて、それを活かした現実的なキャリアプランまで考えている受験生が現れたら...
採用しない理由がないですよね。
そこを目指します。
詳しく解説していきます。
手順 ❶ 事前学習:「日本の消防」の全体像を把握する
まず、日本の消防行政がどんなものか、全体像を知ることからはじめます。一番手っ取り早いのは、総務省消防庁が毎年発行している「消防白書」を読むことです。
-
令和2年版 消防白書(PDF版) | 令和2年版 消防白書 | 総務省消防庁
火災の予防や消火、救急、救助など国民一人ひとりが安心して暮らせる地域づくりに取り組む消防庁の情報を発信しています。
www.fdma.go.jp
かなりボリュームがある資料ですので、全てを読み込む必要はありません。細かい統計データや固有名詞を暗記する必要もないです。「はじめに」と「目次」だけ読んで、あとは興味のあるページだけ軽く目を通しておきましょう。
このステップを終える目安としては、「日本の消防の現状と課題は?」と質問されて、なんとなく答えられるレベルになればOKです。
手順 ❷ 組織研究:消防本部ごとの特徴を把握する
日本には大小700以上の消防本部があり、それぞれ取り組んでいる施策や行政課題に違いがあります。
つまり、求める人材像 ( もしくは専門知識・技術等 ) にも違いがあります。
採用担当者に刺さりやすいアピール方法を模索するためにも、自分が志望する消防本部の特徴を把握しておきましょう。
消防本部のWEBサイトを見ておけばOK
色々と難しそうな組織研究ですが、基本的には消防本部のWEBサイトを見ておけばOKです。
たとえば東京消防庁は、採用試験専用の特設WEBサイトを用意しており、職務内容や消防学校のカリキュラムの紹介など受験生向けのあらゆる情報を公開しています。
-
東京消防庁採用情報サイト
世界最大規模の消防機関「東京消防庁」の職員募集のサイトです。採用情報・スケジュールの詳細なども掲載しています。
tfd-saiyo.jp
このような採用ページが用意されている場合は、その内容だけ把握しておけば十分です。
消防本部のWEBサイトがない場合
小規模な消防本部だと独自のWEBサイトを開設していない場合がありますが、そんな時は実際に消防署に立ち寄って採用パンフレットを入手しましょう。大抵、どの消防署の受付にも受験者用の採用パンフレットが用意されているはずです。
また、自治体のWEBサイトを見るのもオススメです。
というのも、消防本部というのは基本的に自治体の下部組織でして、たとえば東京消防庁であれば、東京都庁内のひとつの部署といったイメージです。東京消防庁の活動方針というのは、都庁の意向が元になってるわけです。
実際、東京消防庁の重点施策は、都庁の防災プランとほぼ一緒です。(当たり前ですが)
この構造は東京以外でも基本的には同じなので、もし消防本部のWEBサイトがなくて組織研究が進まない方は、自治体の公式サイトをチェックしてみてください。
現役職員に話を聞いてみる
消防本部のWEBサイトや採用パンフレットは「受験して欲しい立場の人間」が作ってるので、ポジティブな内容しか書かれてなかったりします。
あまり真に受け過ぎてもバランスが良くないので、できれば受験する消防本部の職員と実際に会って、直接話を聞いてみましょう。いわゆる、OB・OG訪問というやつです。
質問内容としては、以下のポイントを押さえておけば十分かと思います。
ポイント
- 1日の仕事の流れ
- 仕事のやりがい
- 入って良かったと思うこと
- 仕事でつらいと思う瞬間
- 辞めようと思ったことはあるか
- 活躍してる職員の共通点
- 先輩や上司との関係性
- 給与・休暇日数・福利厚生の満足度
なお、もし身の回りに相談できる消防職員がいない場合は、最寄りの消防署に電話して見学のアポを取るのもおすすめです。受験生のためなら、大抵の消防署は対応してくれるはずです。
こんな感じでお願いすると良いと思います。
手順 ❸ 自分の強みを消防と結びつける。
面接対策のための業界研究では、ただ知識を詰め込むだけでは意味がありません。皆さんの目的は消防マニアになることではなく、消防官になることだからです。
集めた知識は自分の強みと照らし合わせて、「どうやったら自分という人材を消防組織に売り込めるか」という視点で整理しなければなりません。
ここで、少し具体例を出します。
たとえば近年の消防白書を読むと、日本の消防行政は次のような分野に重点を置いていることが分かります。
- デジタル・トランスフォーメーション ( DX ) の推進
- 行政サービスの多言語対応
- ICT技術の積極活用 ( ロボット・ドローンの活用等 )
これらの施策では、外国語修得者・プログラミング経験者・機械系エンジニア・理工系学部出身者など、消防とは一見かけ離れた分野の人材が必要とされてます。
つまり、仮にこれらの専門性を持った受験生がその強みをアピールできたなら、採用試験において相当優位に立てるということです。
もちろん、上記の内容はあくまで一例なので、もしあなたが業界研究を進める中で自分の専門知識・技術を活かせる分野を見つけられたら、その専門性を積極的にアピールしましょう。他の受験生に大きな差をつけることができます。
手順 ❹ 現実的なキャリアプランを考える
いきなり変な話かも知れませんが、就職は結婚と似ています。
互いの個性をすり合わせて、相性が良ければ末永く一緒になれるわけですが、「円満な結婚生活」を思い描けなければ全てがご破産になります。
ここで少しだけ、イメージしてみてください。
あなたの婚約相手は、年収1000万超のエリート会社員。営業成績はトップで、将来有望です。しかし、本人は結婚を機に退職して、スポーツ選手を目指すそうです。スポーツ経験は特にありませんが、一生懸命頑張るそうです。
ちょっと極端な例え話ですが、想像してみてください。多分、結婚相手のあなたは、不安になるんじゃないかと思います。
「このまま自分の強みを活かせば将来安泰なのに…」
「どうしてもスポーツ選手を目指したいなら結婚は保留にしようか…」
多分、こんなことを考えるんじゃないでしょうか。
これと同じことが、採用試験にも言えるわけです。
採用試験における「キャリアプラン」とは、あなたが組織に提示する「円満な結婚生活」です。
将来を見据えて、自分の強みを活かしながら、末長く組織に貢献していく姿勢を示さなければなりません。
「レスキュー隊員になりたい」は、あなたにとって現実的なキャリアプランか?
ここで少し、具体例を出します。
消防官採用試験において、受験生に一番人気な職種はレスキュー隊員です。
カッコいいですよね、気持ちは分かります。
もしかしたら、今この記事を読んでいるあなたも、レスキュー隊員に憧れて消防官になろうと思った1人かも知れません。
ただ、ここで自分に一度問うて欲しいのは、それがあなたの強みを一番活かせるキャリアプランなのか、ということです。
たとえば、法学部出身のインドア派の受験生がいたとしましょう。体力試験の結果は正直微妙です。そんな彼が、「将来はレスキュー隊員になりたいです」と語ったらどうでしょうか。
おそらく、面接官は不安になると思います。
「この受験生を採用したら、ずっと救助隊を目指して頑張り続けるのかな」
「救助隊員になるには相当時間がかかるだろうし、それに付き合う時間もコストがもったいないな」
「もしかしたら救助隊員になることを諦めて、消防をやめてしまうかも知れない」
少し残酷かも知れませんが、こんな不安が頭をよぎるわけです。
でも、もし仮に同じ受験生が、以下のアプローチで攻めていたらどうでしょうか。
「大学で学んだ法令知識を活かしながら、将来は予防行政の発展に貢献したいです」
これなら、面接官は納得すると思います。
むしろ、法律の専門知識を持つ受験生は消防にとって貴重な人材ですから、体力試験の結果が多少悪かったとしても普通に受かると思います。
自分の強みの延長線上でキャリアプランを考える
すでにお分かり頂けたかと思いますが、キャリアプランを作る上で最も大切なのは、自分の強みを活かせる現実的な将来像を描くことです。
「私には、自分の強みを活かす意思があって、しかも、その延長線上に理想のキャリアプランがあります」
こんなアピールをすることができたら、組織として、これ以上に安心して採用できる人材はいません。
せっかく持っている自分の強みを、最大限に活かすアピール方法を考えましょう。
採用後のキャリアは自由
ここまでの話を聞いて、
そう思った方もいるでしょう。
結論から申し上げると、それで全く問題ありません。
「現実的なキャリアプランを考えて」というのは、「なりたい夢を諦めろ」という意味ではないからです。
正直、入ってしまえばこっちのもんという話で、仮に採用試験でどんな発言をしても、それは採用後のキャリアに全く影響しません。
たとえばあなたが「予防の仕事がしたい」と採用試験で語ったとして、就職後にレスキュー隊員を目指してもなんら問題はないわけです。
むしろ、採用当時に描いていた将来像をそのまま実現している消防官のほうが少ないと思います。
自分の強みと理想のキャリアプランが結びつかない人は、とりあえず採用試験では面接官が納得しやすいキャリアプランを用意して、就職後に頑張って夢を実現したほうがいい、というのが私の意見です。
そもそも合格しなければ、何も始まりませんから。
ちょっとズル賢いと思われるかも知れませんが、それが合格をつかむ知恵ということです。
STEP ❸ 模擬面接 … 自分の考えを面接官に伝える練習をする。
自己分析と業界研究が終わり、志望動機・自己PR・キャリアプランの3つの要素を整理できたら、次は実戦訓練に入ります。
あなたの思考を言語化し、スムーズに面接官に伝える練習をしていきます。
といっても方法は簡単で、基本的には私のYouTube動画「頻出質問を完全網羅!消防模擬面接」を使って練習すればOKです。
この動画では、消防官採用試験の面接における最頻出質問40問について、質問の意図と回答時の注意ポイントを分かりやすくまとめています。また、受験生が1人でも模擬面接できる作りにもなっています。
スマホさえあればどこでも視聴できるので、通勤通学中のイメージトレーニングにも最適です。
急ぎたい人向けに最短ルートも作ってあります
動画で紹介している最頻出質問について、「イシカワだったらこう答える」という質問回答集も作ってあります。
消防官採用試験を受ける方の中には、どうしても面接対策に行き詰まってしまう方や、部活や仕事の都合で面接対策の時間を十分にとれない方もいます。そんな受験生の方が最短ルートで面接対策を終えられるよう、手助けになればと思って作ったテキストです。
面接対策の質を劇的に高めることができるテキストですので、面接に不安がある方はぜひ入手してみてください。
質問への回答は結論から話す
模擬面接を進める上で特に意識したいのは、「結論から話す」ということです。
他人に何か物事を伝える時、理由や経緯から説明し始めてしまうと、相手は何が言いたいのか分からず理解に時間がかかってしまうからです。
最悪の場合、話の途中で集中力が切れて、話を聞くこと自体をやめてしまいます。
逆に、単刀直入に結論から話し始めれば、相手はその結論を前提に話を聞けるので、内容の理解がスムーズになります。
また、話しているあなた自身も、「自分が何を伝えたいのか」を最初に声に出して確認することになるので、話の流れを整理しやすくなります。
以下の構文を参考にしつつ、自然に使いこなせるように訓練しておいてください。
- 結論 ... 質問への直接的な回答を述べる。
- 理由・具体例 ... 結論を具体的に説明する。
- 結論の再提示 ... 主張を繰り返し、強調する。
総仕上げは対人模擬面接
動画やテキストでの模擬面接にある程度慣れてきたら、仕上げに対人模擬面接をやってみましょう。相手のいない1人模擬面接では、実際の面接のような言葉のキャッチボールや深掘り質問を再現できないからです。
面接官役は、家族や友人・キャリアセンターの職員などにお願いして、普段の会話と同じように、気になった部分やおかしいと思った部分は「なぜ?」「どうして?」と切り返してもらいましょう。
なお質問内容は、先ほど紹介したYouTube動画の質問リストをそのまま使えばOKです。
エントリーシートの下書きを考える
一般企業と同じく、消防官採用試験でもエントリーシートを提出します。
書類の呼び方は消防本部によって異なりますが、たとえば東京消防庁なら「受験者調査票」です。東京消防庁の面接では、この受験者調査票に書かれた内容と、出願時にあなたが提出した経歴・資格などの記録をもとに、質疑応答が進んでいきます。
つまり、たとえば受験者調査票に部活動での経験を書いたなら、面接官は部活に関連した質問をしてくる可能性が高くなります。
エントリーシートで全てを説明する必要はない
エントリーシートに書く文章は、あくまで面接本番に質問してもらうための布石です。
詳しい内容は本番で話せば良いので、受験者調査票の中で全てを語る必要はありません。
できる限り要点を絞って、簡潔で読みやすい文章になるよう心がけましょう。
STEP ❹ 直前対策 … 服装や身だしなみを整える。
試験日が近づいてきたら、服装や身だしなみの準備をはじめましょう。
服装はシンプル・イズ・ベスト
まず大前提として、服装で個性を表現するのはやめたほうがいいです。
良いか悪いかは別として、消防の世界では極端に個性を主張する姿勢はあまり許容されません。
できれば私も「みんな好きな格好で試験受けなよ」って言いたいところですが、消防官採用試験ではなるべくスタンダードな服装を選んで、堅実さや従順さを印象付けるように心がけましょう。
自分の個性は、服装ではなく中身で表現すればOKです。
スーツ
一般的なリクルートスーツで問題ありません。色調はブラック・ネイビー・チャコールグレーあたりが無難です。生地は光沢や艶が強いものは避けて、無地かストライプの薄いものを選びましょう。
ネクタイ
派手な色柄は避けたほうが無難です。
たとえば、こんなネクタイ。
「ザ・無難」という感じです。
なるべく幅の狭いストライプ柄や、小紋柄・小さな水玉柄などがオススメです。
色は、知的・誠実・勤勉さをアピールしたいならブルー系、活気・やる気・情熱をアピールしたいならレッド系といった配色が良いでしょう。
なお、ネクタイピンは不要です。
ベルト
黒い革製ベルトで、バックルは四角く、派手過ぎないシンプルなデザインがおすすめです。
Yシャツ
白無地を着用してください。
下着
白無地のVネックTシャツが理想的です。柄物や色物はYシャツに透過するので絶対に避けましょう。
靴下
黒か紺の無地にしましょう。
革靴
黒のストレートチップがおすすめです。
つま先の甲に縫い目のラインが入っているデザインで、最もフォーマルな革靴です。
消防官が仕事中に履いている革靴もこのデザインです。
なお、金属製のバックルが付いていたり、光沢の強いエナメル加工がされている靴などはNGです。
最近流行りの先が細くとんがったスタイルも、できれば避けたほうが無難です。
これとか、安くてオススメかなと思います。
バッグ
普通のリクルートバッグで問題ありません。
なお、遠方から来る受験生は、リュックとしても使える2wayバッグでも問題ありませんが、面接前に背負うのはやめましょう。スーツのシワや型崩れの原因になります。
腕時計
ベルトは金属製ならシルバー、革製ならブラックが無難です。
イメージとしては、こんな感じ。
面接に不釣り合いなハイブランドの時計や、派手な装飾がある時計、スマートウォッチなどはNGです。
補足
※ 腕時計はいらないという人もいるかも知れませんが、試験当日は時間厳守な場面が多々あるので必ず着用しましょう。スマホで時間を確認するのはNGです。
身だしなみ
公安系公務員が特に気にする部分です。彼らの身だしなみに対するこだわりは異常なので、以下の注意事項は要チェックです。
服装のシワ
スーツ・Yシャツ・ネクタイに至るまで、全部パリッパリの状態が理想です。しっかりアイロン掛けしてシワを伸ばしておくか、もしくは一度クリーニングに出して、当日おろして着て行くのが無難です。
ちなみに私は、試験本番でクリーニングのタグが付いてることを面接官に指摘されました。笑
靴の手入れ
革靴のホコリや汚れは必ず取り除き、適度に光沢を出すようにしましょう。市販のワックスとブラシを使って丁寧に磨いておけば大丈夫です。
消防時代に私が使ってた靴磨きセットです。この手の道具は高級品が多いので、こだわり始めたらキリがないんですが、正直この程度の価格帯のもので十分です。
消防に限らず、革靴のメンテナンスは社会人の基本なので、必ず1個は持っておきましょう。
ちなみに消防学校では、革靴は「顔が映るまで磨け」と言われます。
髪型
爽やかで清潔感のあるヘアスタイルにしましょう。男性であれば「ビジネスショート」や「リクルートショート」などと呼ばれる短髪スタイル、女性であればショートヘアなどが理想的です。
当たり前ですが、派手な染髪、眉毛が隠れるような前髪、長過ぎる襟足やもみあげ、スキンヘッドなどはNGです。
坊主についても、部活動で仕方なく... という場合を除いて、なるべく避けたほうが無難です。
補足
東京消防庁の場合、消防学校に入校すると、男性の髪型は「2cm2mmにしろ」と言われます。これはトップ2cm・サイド2mmのスポーツ刈りという意味で、もみあげは耳の半分の高さまでが基本です。別に採用試験で再現する必要はありませんし、むしろやめといたほうがいいかなとも思いますが、「消防は採用後も短髪が基本」ということは覚えておきましょう。
まゆげ
整え過ぎに注意です。ナチュラルでOK。
ひげ
必ず試験当日の朝に剃りましょう。
爪
伸び過ぎに注意です。身体検査では下着だけになるので、足の爪も切っておきましょう。
耳
時々、「耳にピアスの穴があっても受かるのか?」と質問されますが、結論、問題ありません。穴の跡がある職員、何人も知ってます。
ただし、「昨日までがっつりピアス付けてました!」みたいな穴は好ましくないので、着用してる方は今すぐ外して塞ぎ始めてください。
準備8割、本番2割
消防の世界では「準備8割、本番2割」という言葉をよく耳にします。
これは、「物事の良し悪しは準備で決まる」ということです。
たとえば消防官は、日々の訓練や資機材の整備、過去の災害の研究などを通して、日夜、災害の脅威に備えています。
これは、あらゆる災害と対峙するために必要不可欠な準備でして、省略することはできません。万全な準備があるからこそ、突然の災害にも迅速に対応できるわけです。
これは、採用試験でも同じことが言えます。
ぶっつけ本番でどれだけ気合を入れても、その場のノリで乗り切れるほど面接は甘くありません。相手はプロですから、ほぼ確実に準備不足を見抜かれます。
だからこそ、これまでに紹介した4ステップ、
- 自己分析
- 業界研究
- 模擬面接
- 直前対策
この準備が大切というわけです。
やっておくべきことが盛り沢山なので、ぶっちゃけ面倒くさいと感じる人もいるかも知れませんが、しかし、この4ステップさえ実践しておけば、少なくとも準備不足で失敗することはありません。
繰り返しますが、「準備8割、本番2割」。
準備が万全なら、勝ったも同然です。
STEP ❺ 試験本番
ここでは試験当日、面接前に意識したいポイントを紹介します。
内容的には、「これまで頑張ってきた成果を、面接会場でスムーズに引き出すためのアドバイス」といった感じです。
無理に緊張を隠さない
面接本番は、誰でも緊張するものです。
私自身、自分の採用試験の時は吐き気がするほど緊張しました。
人によっては緊張のあまり、まともに発言できなくなってしまう人もいるでしょう。
そんな時に有効なのが、面接官に「緊張してます」と素直に伝える方法です。
そもそも面接というのは、合格したいと願うほど緊張して当たり前な場面です。チャンスは一度きりですし、しかも人生を左右する一大イベントです。それは面接官も分かっているので、開き直ってもOKというわけです。
しかも、人間の感情とは不思議なもので、無理に隠すと焦りが強くなりますが、思い切って認めてしまえば気持ちが楽になります。「緊張してます」と面接官に伝えることは、自分自身の緊張をほぐすキッカケにもなるわけです。
むしろ、伝えた方が良いくらい
現役面接官としての私の個人的な意見を言わせてもらうと、明らかに緊張してるのに、それを認めない受験者はあまり良い印象を持ちません。
つらい状況や問題を、ひとりで抱え込んでしまう人なんじゃないか。
こう思ってしまうわけです。
特に消防の仕事においては、自分の状況を素直に報告する姿勢がとても重要です。若くてやる気がある職員ほど、苦しい場面でも「大丈夫です」と張り切りがちですが、災害現場でそれをやると、下手をしたら死人が出ます。
面接で「緊張してるか」と尋ねることはよくあることですし、一見すると些細な質問なのですが、面接官はその反応から色々なことを読み取っているわけです。
なんだかんだ、素直が一番大事ということを覚えておいてください。
「よく見せたい」という感情を捨てる
面接本番では「自分を良く見せたい」という気持ちではなく、「自分の考えを伝えたい」という気持ちに切り替えましょう。
自分をよく見せたいという姿勢では、弱点を隠す事ばかりに気を取られてしまい、あなたが持っている本来のコミュニケーション能力を引き出すことができないからです。
イメージは、親しい人との会話
ここで少しだけ、イメージしてみてください。
あなたは面白い映画を観ました。あまりに感動したので、その良さを友達に伝えたいと思います。
この状況であなたは、「自分のことを友達にどう思われるか」を気にしますか?
おそらく、気にしないと思います。
あなたはただ、「映画の面白さを伝えたい」という一心で会話に集中すると思いますし、だからこそ熱意や情熱が伝わって、友達も「なら、観てみようかな」と思うわけです。
面接も一緒です。
流暢な話し方でなくても、冷や汗ビッショリだったとしても構いません。
カッコいい就活生を演じる必要なんてないんです。
重要なのは見栄えではなく、あくまで自分の考えを伝えること。
そのことを肝に銘じておいてください。
言葉のキャッチボールを意識する
熱心な受験生ほど、自分の言いたいことを全部面接官に押し付けてしまいがちですが、面接は言葉のキャッチボールです。
豪速球を投げつけて相手を黙らせるのではなく、面接官が求めているボールをスムーズに返すことが重要です。
仮に話したい内容を全て伝えきれなかったとしても、気になる部分があれば面接官は追加で質問しますし、逆に発言を深掘りして来なければ、面接官の興味はそこまでという話です。質問の主旨とズレたアピールばかりしてもマイナス評価になるだけなので、余計な発言は控えて、聞かれた質問にシンプルに答えるよう心掛けましょう。
まとめ
ということで、今回は以上です。
一見何からはじめていいのか分からない面接対策ですが、順を追って整理してみると、やるべきことは意外とシンプルだったりします。
最後に少しだけ、全体の流れをおさらいしておきます。
- 自己分析
面接官に自己紹介するための下準備です。就職活動の軸・自分の強み・弱点を把握して、他人に伝えやすい形に整理します。自分ひとりで考えるのではなく、友人や家族に手伝ってもらいながら他己分析するのも効果的です。
- 組織研究
消防本部のWEBページや採用パンフレット、総務省消防庁が公開している消防白書などを読みながら、「消防とは何か」を研究していきます。最終的には自分の強みと消防組織を結びつけて、自分の適性に合った現実的なキャリアプランを用意しましょう。
- 模擬面接
自分の考えを面接官に伝える練習をします。YouTube動画やnoteテキストを使って練習すればOK。総仕上げは家族や友人にお願いして、対人模擬面接をやってもらいましょう。
- 直前対策
試験本番に備えて服装や身だしなみを整えます。派手な服装やヘアスタイルは避けて、誠実さや堅実さをアピールできる身なりを心掛けましょう。
- 試験本番
緊張は無理に隠さず、「よく見せたい」という感情は捨てましょう。準備は十分してきたのですから、あとはその全てを面接官に示すだけです。「減点されないように…」と弱腰な姿勢になるのではなく、「もっと自分のことを伝えたい」という姿勢に切り替えて、積極的に自分をアピールしていきましょう。
以上です。やるべき事はたくさんあるのですが、頑張れば1〜2週間で終わると思います。
上記のポイントを意識しつつ、最後のラストスパート、頑張っていきましょう。
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