こんにちは、イシカワです。
この記事では、東京消防庁の論作文(小論文・作文)について、直近2年の過去問・出題傾向・試験当日までの対策方法をまとめています。東京消防庁の消防官を目指す方が、何をどの順で準備すればいいか、分かりやすく整理しました。
この記事でわかること
- 東京消防庁の論作文の区分と試験条件(Ⅰ類=論文/Ⅲ類=作文・試験時間・文字数)
- 直近2年の過去問(Ⅰ類・Ⅲ類・第1回/第2回つき)
- 過去問から読み取れる出題傾向
- 採点で見られやすい評定ポイント
- 当日までの準備の手順と、よくある質問への回答
東京消防庁の論作文の試験条件
東京消防庁では、受ける区分によって「論文(Ⅰ類)」と「作文(Ⅲ類)」が分かれます。大学卒業程度のⅠ類は論文、高校卒業程度のⅢ類は作文として実施されてきました(このほかⅡ類も設けられてきました)。ここを取り違えると、対策の方向が最初からずれてしまいます。
出題条件は、Ⅰ類・Ⅲ類とも「60分」「600字以上800字程度」で実施されてきました。
| 採用区分 | 問題形式 | 試験時間 | 文字数 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ類 | 論文 | 60分 | 600字以上800字程度 |
| Ⅲ類 | 作文 | 60分 | 600字以上800字程度 |
注意したいのは、文字数の「下限」です。「600字以上」とされる以上、600字に届かない答案は内容以前に厳しい評価になりがちでした。まずは下限を確実に超え、そのうえで内容を作り込むのが鉄則です。ここからは区分ごとに、過去問と出題傾向を見ていきましょう。
なお、実際の試験時間・字数・区分名等の試験条件は、年度ごとに変わることがあります。本試験前には必ず、最新の公式情報(募集要項・採用案内等)を確認してください。
東京消防庁・Ⅰ類(論文)の過去問と出題傾向
東京消防庁・Ⅰ類(論文)の過去問
Ⅰ類の論文は、ひとことで言うと「都民・東京という社会的役割+消防職員としての内面・倫理」が問われる形式です。Ⅰ類は各年度、第1回・第2回で出題されているため、直近2年分の全4回を掲載します。
2025(令和7)年度
第1回:東京の地域特性をあげ、都民が安心して暮らせる都市の実現に向けて、東京消防庁が推進すべき取組についてあなたの考えを述べよ。
第2回:多様性を尊重する職場を実現するために、組織としてどのような取組をすべきか、東京消防庁に限らず一般的な組織を前提として具体的に述べよ。
2024(令和6)年度
第1回:都民が東京消防庁に期待することをあげ、その期待に応えるために東京消防庁が行うべき施策についてあなたの考えを述べよ。
第2回:消防職員に高い倫理観が求められる理由をあげ、消防職員として都民の信頼を得るためにあなたが取り組むことを述べよ。
(出典:東京消防庁)
東京消防庁・Ⅰ類(論文)の出題傾向
直近2年分から読み取れる傾向は、主に2つです。
傾向1:「都民・東京」と「倫理・信頼」の2本の軸
2024年度は、第1回が「都民が東京消防庁に期待すること」と施策、第2回が「消防職員の倫理観」と都民の信頼という構成でした。つまり、社会的な役割を論じる回と、職員としての内面・倫理を論じる回がセットで用意される年があります。どちらを引いても書けるよう、両方の軸を準備しておくのが安全です。
傾向2:社会の今を反映した論点も入る
2025年度はやや色合いが変わり、第1回が「東京の地域特性と安心して暮らせる都市」、第2回が「多様性を尊重する職場」でした。地域特性やダイバーシティといった、社会の今を反映した論点が入ってきています。「災害対策の知識さえあればよい」では足りません。東京の都市特性や社会の大きな流れを、自分の意見とセットで書ける状態にしておきましょう。
なお、イシカワ塾では、このような東京消防庁・Ⅰ類の出題傾向に合わせた「予想テーマ解答例」もご用意しております。必要に応じてご活用ください。
東京消防庁・Ⅲ類(作文)の過去問と出題傾向
東京消防庁・Ⅲ類(作文)の過去問
Ⅲ類の作文は、Ⅰ類とは対照的に「東京消防庁の魅力・志望理由・自分の成長や経験」を問う形式です。行政施策を論じるのではなく、あなたの人柄と志望度が出るテーマが続きます。Ⅲ類も第1回・第2回と複数回の試験が行われる年があるため、直近2年分の出題をまとめて掲載します。
2025(令和7)年度
第1回:あなたが考える東京の魅力をあげ、東京消防庁の職員としてどのように活躍していきたいか具体的に述べよ。
第2回:困難を乗り越えた経験とそこから学んだことを東京消防庁でどう生かしていきたいか述べよ。
2024(令和6)年度
あなたが感じる東京消防庁の魅力と、消防職員としてどのように成長していきたいかについて述べよ。
(出典:東京消防庁)
東京消防庁・Ⅲ類(作文)の出題傾向
Ⅲ類の作文は直近2年のいずれの回も、東京・東京消防庁の魅力と、自分の成長や経験を問う形でした。「なぜ東京消防庁か」「どう活躍・成長したいか」を自分の言葉で書けるかが、一貫した軸になっています。
書きやすそうに見えますが、ここが落とし穴です。書きやすいテーマほどライバルと差がつきにくく、誤字脱字や原稿用紙の使い方、結論の明確さといった基本の精度で勝負が決まります。志望理由を「憧れ」で終わらせず、自分の経験と結びつけて具体的に書けるかで差がつきます。
なお、イシカワ塾では、このような東京消防庁・Ⅲ類の出題傾向に合わせた「予想テーマ解答例」もご用意しております。必要に応じてご活用ください。
また、東京消防庁ではⅡ類も実施されてきましたが、Ⅱ類は過去問の公表が限られます。Ⅱ類の過去問と模範解答例をまとめた教材もご用意していますので、Ⅱ類を受験される方は必要に応じてご活用ください。
採点でどこを見られるか(Ⅰ類・Ⅲ類共通)
採点者が見ているのは、文章の上手さよりも「この人と一緒に現場へ出られるか」だと考えてください。
消防官の採用試験は、文章力を競う試験ではなく、一緒に働く仲間を選ぶ試験です。もちろん、論作文として基本的なルールを守ることは大前提ですが、それ以上に、「設問の要求に正面から答えているか」「消防職員としての当事者の視点で書けているか」が特に重視されます。「一市民の感想」ではなく「消防職員ならどう考え、何をするか」まで落とし込めているかを、採点者は見ています。
特に東京消防庁の論作文試験の場合、次のポイントに注意しましょう。
- 設問の要素をすべて拾えているか。「期待をあげ、施策を述べよ」なら、期待の指摘だけで終わらず施策まで書き切れているか。
- 評論家ではなく、消防職員として何をするかという当事者の立場で書けているか。倫理・信頼を問う回はこの意識が特に見られます。
- チームで動く意識と、都民への責任感が文章からにじみ出ているか。消防は隊で動く仕事です。
東京消防庁が掲げる運営の重点
東京消防庁は、公式サイトで『東京消防庁重点施策』を公表しています。令和8年度は、次の5つの重点施策で構成されています。
- 震災等あらゆる災害への消防活動能力の向上
- 一人でも多くの命を救うための救急活動体制の強化
- 自助・共助・公助の連携強化による地域防災力の向上
- 建物の安全性を向上させるための火災予防の推進
- 都民の期待に応え続ける持続可能な執行体制の構築
過去問と見比べると、つながりがはっきりします。Ⅰ類で問われてきた「東京の地域特性と安心して暮らせる都市の実現」「都民が東京消防庁に期待すること」は、この重点施策の「震災等あらゆる災害への消防活動能力の向上」「自助・共助・公助の連携強化による地域防災力の向上」「都民の期待に応え続ける持続可能な執行体制の構築」と、そのまま重なります。つまり、東京消防庁が組織として重点を置く分野が、そのまま論文の設問になっているということです。答案でこの重なりを意識できると、説得力が一段と増します。
重点施策は毎年更新されます。受験前に、最新版(東京消防庁公式サイト)を確認しておきましょう。
(出典:東京消防庁『東京消防庁重点施策』)
答案で使える東京都の事実
傾向で見たテーマに沿って、答案の説得力を上げる公表データを紹介します。丸暗記ではなく、序論で課題や都市特性を示す材料として使ってください。
- 東京都の被害想定では、都心南部直下地震が冬の夕方に発生した場合、死者約6,100人、避難者約299万人、帰宅困難者約453万人、23区の約6割が震度6強以上(令和4年5月公表)。→ Ⅰ類「東京の地域特性」「安心して暮らせる都市」で、大規模災害への備えを示す序論の材料に。
- 東京都の人口は約1,427万人(14,273,066人)で、区部に約7割が集中する(令和7年10月時点・推計)。→ Ⅰ類「東京の地域特性」で、人口集中という都市特性を示す材料に。
- 東京都の高齢者人口は312万人・高齢化率23.4%で過去最多(令和7年9月時点・推計)。→ 「救急活動体制の強化」を論じるとき、救急需要増の背景を置く材料に。
なお、数値は公表時点のもので、年度によって更新されます。答案で使うときは「約」を付けた概数で十分です。
(出典:東京都公表資料[被害想定・推計人口・高齢者人口推計等])
なお、イシカワ塾では、全国の消防官採用試験の論作文課題を分析し、最も出題可能性の高いテーマだけを集めた「予想テーマ解答例セット」もご用意しております。必要に応じてご活用ください。
試験当日までの対策ガイド
やることは至ってシンプルです。
- 良質な解答例を読む
- 自分で書いてみる
これだけに集中しましょう。
闇雲に、自分の力だけで論作文対策を乗り切ろうとするのは、あまりに無謀です。もちろん、独学での努力を否定するわけではありませんが、論作文試験の先には面接なども控えていますので、ここは出来る限り効率化し、他の試験対策に投資できる時間を増やしましょう。
試験当日までのオススメの過ごし方は以下の通りです。
- 「消防論作文の書き方ガイド」などを参考にしつつ、解答例を読み、論作文の基本の型を身につけましょう。結論・理由・具体・まとめの骨格をまず固めます。
- 自分の区分を確認しましょう。Ⅰ類は「都民・東京」と「倫理・信頼」、Ⅲ類は「志望動機・魅力・成長」に重心を寄せて準備します。区分に合わせて、書くネタの引き出しを作っておいてください。
- 身につけた型に、東京消防庁の重要テーマを当てはめます。「都民の期待と施策」「東京の地域特性」「消防職員の倫理と都民の信頼」「志望理由と成長」などのテーマで予想問題を作り、実際に手を動かして答案を作る練習をします。当塾の「過去問解答例」や「予想テーマ解答例セット」を活用するのもオススメです。
- 本番は手書きです。60分・600字以上800字程度を本番どおりに測って書く練習を、試験本番の2週間前くらいまでには始めましょう。まず下限の600字を確実に超え、時間配分を体に覚えさせます。
- 書いた答案を、設問とつき合わせて見直しましょう。設問の要素をすべて拾えているか、消防職員の当事者として書けているか、チェックしましょう。可能なら第三者に添削してもらうと、なお良しです。
なお、できれば仕上げの段階で意識してほしいのが、面接対策との一貫性です。論作文で書いた志望理由や成長したい方向は、面接でも問われる可能性があります。両者で言うことがブレないように、自分の軸を一本にしておくのが望ましいです。論作文は面接の下書きでもあります。
よくある質問(FAQ)
Ⅰ類とⅢ類で、対策は変えるべきですか。
変えるべきです。Ⅰ類は論文で論証力、Ⅲ類は作文で表現力が中心になります。Ⅰ類は都民・施策・倫理を論じる練習、Ⅲ類は志望理由と自分の成長を具体的に書く練習へ、重心を寄せてください。
過去に出たテーマがそのまま出ますか。
同じ問題がそのまま出るとは限りません。ただしⅠ類は「都民・東京」と「倫理・信頼」、Ⅲ類は「志望動機・魅力・成長」という軸が続いています。系統を理解しておけば、初見のテーマでも対応しやすくなります。
文字数は多いほど有利ですか。
いいえ。600字の下限を超えることは必須ですが、それ以降は内容重視です。中身の薄い水増しは逆効果になりかねません。800字程度の枠で、伝わる文章を必要十分な量で書くことを意識しましょう。
時事や東京の知識はどこまで押さえればよいですか。
東京の地域特性(人口集中・高層建築・大規模災害リスク)や、多様性・デジタル化といった社会の大きな流れを、自分の意見とセットで言える状態にしておけば十分です。細かな数値の暗記より、論点を説明できることが大切です。
Ⅲ類は作文だから簡単ですか。
油断は禁物です。書きやすいテーマほど差がつきにくく、誤字脱字・原稿用紙の使い方・結論の明確さといった基本で評価が決まります。志望理由を「憧れ」で終わらせず、自分の経験と結びつけて具体的に書けるかが分かれ目です。
制限時間や字数は毎年同じですか。
本記事の「60分・600字以上800字程度」は、過去問を追跡してきた範囲での条件です。年度や区分の制度変更で見直されることがあるため、出願前に必ず最新の採用案内で確認してください。
まとめ
最後に要点を整理します。
- 東京消防庁の論作文は、Ⅰ類=論文、Ⅲ類=作文(いずれも60分・600字以上800字程度)で、Ⅰ類は「都民・東京」と「倫理・信頼」、Ⅲ類は「志望動機・魅力・成長」を問うという傾向でした。
- 直近の出題テーマは、東京消防庁の運営の重点(震災対応・救急活動体制・都民の期待に応える執行体制)とつながっています。
- 準備は、解答例を読む → 自分で書いてみるの順番で進めるのが最短ルートです。まず下限の600字を確実に超えましょう。
なお、ひとりでの対策に不安がある方、手応えがなかった方、仕事や部活などで時間がない方には、Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類、それぞれの採用区分に合わせて、独学での合格をサポートするテキストもご用意しています。必要に応じてご活用ください。
あなたが最終合格し、東京消防庁の消防官として活躍されることを心から願っております。イシカワでした。
POLICE / FIRE EXAM