消防官採用試験

消防士は独学でなれる?独学合格するためのポイントを解説

こんにちは、元東京消防庁消防官のイシカワです。

消防官採用試験の受験を決意したとき、まず受験者を悩ませるのが「独学するか、予備校を使うか」の選択だと思います。

本記事では、「独学でも消防士になれるのか」「予備校に通った方がよいのか」と不安を感じている方に向けて、独学のメリットとデメリット独学合格に向けた具体的な勉強法などを解説します。

独学の良さと難しさを知った上で、自分に合った学習方法を模索してみてください。

消防官採用試験の勉強を独学でするメリット

まず、結論から申し上げると、消防官採用試験の独学合格は可能です

しかも、いくつかのポイントさえ押さえれば、さほど難易度が高いわけでもありません

予備校や専門学校のホームページを見ると、「独学で消防士は難しい」と思わせる表現をよく見るかも知れませんが、それは入校させるための売り文句です。

私自身、独学で消防官になりましたし、同期や同僚にもそのような職員は大勢いましたまた、独学合格した受験生の声も多く聞いています

消防官採用試験の独学合格は、皆さんが想像しているよりも、ずっと一般的であることを覚えておいてください。

独学で消防官採用試験に挑戦することには、いくつか大きなメリットがあります。

経済的負担が圧倒的に少ない

独学で試験対策をするメリットとして、まず挙げられるのが「経済的負担が圧倒的に少ない」という点です。

予備校に通う場合、一般的に20〜50万円程度の入学金や授業料が必要となります。1年制や2年制のコースであれば、さらに高額です。また、通学に必要な交通費も自己負担です。

一方、独学であれば、かかる費用は参考書代のみです

どれだけ参考書を買い込んでも、2〜3万円程度で足りてしまいます

自分のペースで学習できる

自分のペースで学習を進められるのも、独学の大きなメリットです。

苦手科目にはじっくり時間をかけ、得意科目は短時間で終わらせるなどのペース配分が可能です。科目ごとに教材の難易度を変えるのも自由です。

また、時間や場所の制約もありません。「夜の静かな時間帯に勉強したい」「図書館や喫茶店で勉強したい」など、自分の生活スタイルに合わせて勉強できます

時間を有効活用できる

予備校へ通う場合、当然ながら通学には時間がかかります。

1日あたりなら数時間の損失ですが、受講期間全体で見ると数百時間のロスになることも。

一方、自宅学習メインの独学であれば、これらの通学時間は学習や休息に充てることができます

特に、「部活や課外活動で忙しい学生」や「仕事と勉強の両立を迫られる社会人」にとっては、時間の制約上、独学が最も現実的な選択肢となります

消防官採用試験の勉強を独学でするデメリット

独学で消防官採用試験に挑戦することには、「経済的負担が圧倒的に少ない」「自分のペースで学習できる」「時間を有効活用できる」などのメリットがありました。

一方で、独学での試験対策には、当然デメリットも存在します。

独学合格を達成するためには、以下のデメリットと向き合う必要があります。

自分でモチベーションを維持する必要がある

独学によるデメリットとして、まず挙げられるのが「モチベーションを保ちにくい」という点です。

予備校では同じ目標を持つ仲間との出会いがあり、それがモチベーションを高める原動力になるかも知れません。

一方、独学では完全に一人で対策を進めることになるため、人によっては大きな孤独感を感じる場合があります。また、学習計画や進捗管理なども自主的に行う必要があるため、サボり癖がある人は苦労しやすいです。

このため、外部からの刺激やサポートがないと行動しにくい人は、独学には向かないかも知れません

消防官になったあとは、資格選抜も昇任試験も「みんなで一緒に対策」なんてことはあり得ず、一人で黙々と勉強することになります。少し厳しいかも知れませんが、「どうしても一人では勉強できない!」という方は、どこかでその苦手意識を克服する必要があります。

専門的なサポートを受けにくい

専門的なサポートを受けにくいことも、独学のデメリットのひとつです。

予備校に通っていれば、専門の講師が最新の試験傾向をまとめて提供してくれる場合が多いです。

一方、独学では自分でその情報を見つけ出し、学習計画に取り入れる必要があります。

面接と論作文の対策が難しい

教養試験などと異なり、面接と論作文は「 何が正解で、何が不正解なのか 」を受験生自身で判断するのが難しいです

予備校に通う場合は、講師による論文添削や、対人での模擬面接を受けることができます。

一方、独学の場合は、

  • 論作文であれば、解答例を見ながら自分で答案を添削する
  • 面接対策であれば、自分の姿を撮影しながら模擬面接して、後で見直して改善点を修正する

などの工夫が必要になります。

また、教師や家族に協力してもらい、論作文の答案を読んでもらったり、模擬面接の相手をしてもらうなどの行動も必要になるでしょう。

このように、独学での面接対策と論作文対策では、工夫と行動力が必要になります

独学か、予備校か。元消防官の意見

ということで、ここまで独学のメリット・デメリットに触れてきたわけですが、元消防官として、どちらがおすすめかというと、

結論、「まずは独学してみる」ことを強くおすすめします。

理由は、主に以下の3つです。

  1. 独学後の予備校転向は低リスクだが、その逆は絶望的
  2. 予備校に通う時間を課外活動に投資したほうが有利
  3. 消防官採用試験の倍率は下がっている

詳しく解説します。

独学後の予備校転向は低リスクだが、その逆は絶望的

たとえば、独学を少し試してみて、上手くいかずに予備校に通い始めても、損失は多くて数万円程度です

しかしその逆で、「予備校が合わないから、やっぱり独学しよう」となった場合、数十万円の損失を負うことになります

これは例えるなら、「新しいスポーツを始める前に、いきなり高価な装備を買うかどうか」に似ています。

最初は安価な装備で始めて、そのスポーツが自分に合うかどうかを見極めるべきです。しかし、最初から高価な装備を全て揃えてしまうと、後でそれが合わないと分かった時に取り返しがつきません。

これと同じで、独学で合格できる可能性があるにも関わらず、その可能性を試さずに、はじめから予備校( 高価な装備 )を選択するのは避けるべきです

最初はリスクを抑えつつ、段階を踏んで進むのが賢明なアプローチです。

予備校に通う時間を課外活動に投資したほうが有利

消防官に限らず、近年の公務員試験では、一次試験の足切りラインを低く設定して、面接で受験者をふるいにかける官公庁が増えています。これは、受験者の過去の経験や人物像が最重要視されているためです

したがって、独学で最低限の足切りをクリアできるならば、以下のような活動に時間を投資したほうが圧倒的に有利です。

  • 部活動や課外活動を一生懸命に取り組む。
  • 大学生なら、ゼミや研究活動に力を入れ、学会発表するなどして、インターネットの氏名検索でヒットするような実績を残す。
  • 社会人なら、仕事で何らかのプロジェクトを率いたり、専門資格(特に化学・電気・情報系など)を取得する。

これらの経歴は、書類選考の段階でも加点要素になるのに加え、面接時において決定的なアドバンテージとなります

特に、「独学での受験勉強と両立しながら成果を残した」などとアピールできれば無敵ですので、基本的には独学で時間を有効活用しつつ、自分の強みを伸ばすことに集中すべきです。

なお、最低限の足切りラインは、後ほど紹介する独学のポイントを実践すれば十分クリア可能です。

消防官採用試験の倍率は下がっている

味も蓋もない話ですが、消防官に限らず、近年の公務員試験の倍率は劇的に下がっています

これには、少子化による若者の減少、民間企業の給与や労働条件の改善などが影響していると言われています。

たとえば東京消防庁1類であれば、十数年前までは20〜30倍の高倍率でしたが、近年は3〜7倍の低倍率です。

これは、消防にとっては苦しい現実ですが、独学受験生にとっては大きなチャンスです

そもそも受験生が集まらないので、教養試験の足切りもさほど高くありません。「とりあえず面接まで進めて、やる気のある人を採用しよう」というスタンスの消防本部が増えています。

もちろん、しっかり対策しなければ落ちることに変わりないですが、その難易度は確実に下がっています

したがって、はじめて消防官採用試験を受験する人ほど、いきなり高い学費を払って予備校を利用するのではなく、まずは独学で挑戦してみることをおすすめします。

予備校に通うのが望ましいケース

ということで、元消防官としての私の意見は「まずは独学してみる」だったわけですが、そうは言っても、予備校に通うのが望ましいケースもあります

以下の条件に当てはまる人は、予備校の利用を検討してみましょう。

  • 外部から刺激やサポートがないと行動できない人
  • 何年も独学しているが、一度も一次通過したことがない人

デメリットの章でも触れましたが、外部からの刺激やサポートがないと行動できない人は、独学には向かない可能性が高いです

たとえば、第三者による学習管理が必要な人、固定化された授業スケジュールがないと学習できない人、ライバルがいないと学習意欲を保てない人などは、独学よりも予備校を利用するのがおすすめです。

また、一度も一次通過したことがない人も、予備校に通うメリットが大きいです

私がこれまで出会った受験生の中には、数年間の独学を経て合格した人が何人もいますが、彼らの多くに共通するのは、度々一次通過しているという点です。どの自治体を受けても一度も一次通過できないというのは、その人の学習方法や戦略に大きな問題がある可能性が高いです。

このような方は、予備校を利用して専門的な指導を受けたり、他の受験生と関わりながら対策を進めることで、より良い学習スタイルを身に付けるのがおすすめです。

一度も一次通過したことがない人でも、このあと紹介する独学のポイントを実践することで、学習スタイルを改善できる可能性があります。

消防官採用試験に独学で合格するポイント7選

ということで、いくつかのデメリットもありましたが、消防官採用試験に独学で合格することは可能です

さほど難易度が高いわけでもありません。

とはいえ、対策しなければ確実に落ちる試験ですので、ここでは「独学合格七ヶ条」と題して、独学を進める際のポイントを7つ紹介します。

私自身の独学経験のほか、合格者から寄せられた独学体験記などに基づく内容ですので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

独学合格七ヶ条

  • 具体的な学習プランを立てる
  • 必ず毎日、机と向き合う
  • 過去問演習を繰り返す
  • 教養試験は「高配点科目」に集中する
  • 論文対策は「解答例を読む → 自分で書く」の繰り返し
  • 面接対策は動画を使って模擬面接する
  • 体力錬成は、ほどほどに

具体的な学習プランを立てる

試験日から逆算して、大まかな学習計画を作ります。

このとき大切なのは、時間単位ではなく、ノルマ単位で決めることです

たとえば、「数的処理は1日2時間、社会科学は1時間」というように、時間指定して勉強するのではなく、「数的処理は毎日1章ずつ終わらせて、社会科学は5ページ分を暗記しよう」などの目標を立てるべきです。

結局、どれだけ長時間勉強したところで、やるべきノルマが終わらなければ意味がありません

「何時間頑張るか」ではなく「何を達成するか」を目標にしながら学習計画を立てましょう。

参考書の目次を見ると、小さな単元ごとに学習テーマが別れていると思います。この章立てを基本単位にして、学習計画を立てるのがおすすめです。

必ず毎日、机と向き合う

独学で勉強していると、どうしてもモチベーションが上がらない日が必ず訪れます。

そんな時は、「5分だけ」と割り切って机に向かいましょう

人間は惰性で行動できるもので、モチベーションが低い日でも「5分だけ勉強しよう」と机に向かうことで、気づけば長時間勉強していることがよくあります。逆に、どうしても5分以上勉強できない日は、おそらく本当に疲れている日なので、素直にゆっくり休みましょう。

独学を進める上で、最も重要なのが勉強の習慣化ですが、習慣は一度途切れると取り戻すのに時間がかかります

したがって、どれだけ短い時間でも、必ず毎日机と向き合うようにしましょう

過去問演習を繰り返す

消防官に限らず、あらゆる公務員試験対策の王道は、「過去問演習を繰り返す」ことです。

具体的には、

  • 過去問を解いて苦手分野を見つける
  • 弱点を重点的に対策し、克服する

このサイクルの繰り返しです。

もちろん、各科目の基礎知識をじっくり学ぶのも大切なのですが、それだけでは実戦力が身につきません。スポーツと同じく、「やりながら学ぶ」という姿勢が公務員試験でも重要となります。

特に、消防官採用試験では「数年前の過去問がほぼ同じ内容で出題される」ことが多々ありますので、過去問演習は必ず学習計画に組み込みましょう。

教養試験は「高配点科目」に集中する

消防官採用試験の教養試験は出題範囲が広いため、全てを網羅的に学習するには時間がかかります。したがって、出題数の多い科目を優先的に学習する必要があります

消防官採用試験の場合、「数的処理」「文章理解」「社会科学」などの配点が高い傾向にありますが、特に数的処理は配点の30~40%を占めることも多いため、必ず重点的に対策しておきましょう

最近では、筆記試験にSPI方式を導入する消防本部も増えてきました。民間併願する方は、SPI方式を選択することで学習コストを大きく抑えられるため、志望先にSPI方式がないかチェックしてみましょう。

論文対策は「解答例を読む → 自分で書く」の繰り返し

論作文対策も、教養試験対策と同じく「やりながら学ぶ」という姿勢が重要です。

具体的には、

  • 解答例を読む
  • 自分で書いてみる
  • 答案を読み返す
    (できれば時間が経ってから)

この繰り返しです。

シンプルですが、これ以上でも、これ以下でもありません。

とにかく良質な解答例をたくさん読み、真似をしながら自分で書いてみることが重要です

なお、自分で書いた答案を読み返す際は、「時間が経ってから読み返す」のがおすすめです。書き終えた瞬間は最高の答案に思えても、しばらく経って読み返すとイマイチなことはよくあります。解答例を参考にしつつ、その違和感を修正していくことが重要です。

ちなみに、下記リンクから私が書いた論文解答例を読めますので、ぜひ参考にしてみてください。

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合否を大きく左右する面接ですが、対策方法はシンプルです。

  • 想定問答集を作る
  • 動画を使って模擬面接する
  • 対人模擬面接をする

詳しく解説します。

1. 想定問答集を作る

想定問答集とは、「よくある質問の答えをまとめたもの」です。

面接官の質問に対し、即座に考えを整理してスムーズに返答するのは難しいため、質問への応答は事前にある程度考えておく必要があります。想定問答集は、その返答内容をまとめたものです。

少し難しそうに思えるかも知れませんが、下記リンクの質問リストを参考にすれば、どんな回答をすべきなのかイメージが掴めるはずです。少しボリューミーですが、それぞれの質問への返答をノートなどにまとめておきましょう。

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2. 動画を使って模擬面接する

当塾のYouTube動画「頻出質問を完全網羅!消防模擬面接」を使って、模擬面接を繰り返しましょう。

この動画を使えば、時間や場所を選ばずに、タダで何度でも模擬面接できます

一番おすすめな使い方は、この動画で模擬面接しつつ、質問に答える自分の姿を動画撮影する方法です。最初は自分の姿や話し方にびっくりすると思いますが、自分を客観視することで、対人模擬面接に近いフィードバックを得ることができます

3. 対人模擬面接をする

キャリアセンターや就職指導の先生に模擬面接してもらいましょう。相手が見つからなければ、家族や友人でも構いません。先ほど紹介した質問リストを渡して、質問してもらいましょう。

この際も、できれば自分の姿を動画撮影し、後で見直すようにしてください。

試験直前期には、動画模擬面接と対人模擬面接を可能な限り繰り返しましょう。特に、動画模擬面接については回数の制約がないため、試験前日まで時間が許す限り挑戦するのがおすすめです。

体力錬成は、ほどほどに

繰り返しになりますが、近年の消防官採用試験は人物重視の試験です。

特に体力は、採用後の消防学校研修中に十分鍛えられるため、体力試験の配点はさほど高くありません。あくまで基礎体力があるか、消防活動に支障が出そうな動作障害がないかを見極める試験です。

逆に、過度な体力錬成による怪我のリスクの方が致命的なため、体力試験対策はほどほどにしておきましょう

なお、どうしても体力面で不安がある方は、下記リンクの評価基準を参考にトレーニングしてみましょう。

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まとめ

今回は、独学で消防官採用試験に合格するためのポイントを解説しました。

独学で試験対策を進めるのは、一見すると不安の多い選択肢ですが、実はそれほど難しいことではありません。

見も蓋もないことを言ってしまえば、そもそも消防官採用試験は、公務員試験の中でも難易度が低い試験です。独学合格できないわけがなく、事実、消防官採用試験の倍率が今より厳しい時代であっても、独学で合格する人は大勢いました。

受験資格さえ満たして、地道に対策を進めていけば、今は誰もが消防官になれる時代です。

ぜひ、諦めることなくチャレンジしてみてください。

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